武井さんは、1942年東京深川生まれ。3歳の時、東京大空襲に遭いました。「両親と小学校に避難して助かった。翌朝校門を開けると、焼けただれて折り重なっていた何人もの人。まだみんな息をしていたのを覚えている」。
両親とともに横須賀に転居し、高校では電気科で学びました。卒業して日立の本社に勤務。しかし活動家だったために海外転勤を命じられます。それを機に退社して独立。自宅のある横須賀市野比に電機屋を構えました。量販店が出始めたころで、負けるものかと必死に商売を続けてきました。
店を始めて30年ほど経ったころです。「順調に返済し、何にも落ち度がなかった」にもかかわらず、当時の小泉政権の号令のもとで始まった強引な不良債権処理の被害に。不良債権扱いされ、借り入れていた事業資金の一括返済を迫られました。「悔しかった」と悔しさをにじませる武井さん。返済しきれずに、店舗も自宅も競売にかけられました。「もう商売は・・・」と諦めかけていた武井さんを励ましたのは、お客さんの「無くなっちゃ困る」という声でした。「よしっ!」と決意し、元の店舗の近くに店舗を構え、商売を再開。「やっぱりお客さんは財産です」武井さんのお客を大事にする意志が逆にお店を支えています。その姿勢が評価され、顧客は1200〜1300人。「もらった修理の注文は、絶対にメーカーに出さずに自分で修理する」のも、お客さんを大事にする武井さんのモットーです。
2年前、店舗を改装するためにとセーフティネットの融資を申し込むと、「債権が残っているからダメ」と自己破産した時の残債を理由に断られました。「一回も請求されたこともない債務。そんなのは返す義務はないし、それを理由にした融資謝絶は納得できない」と、保証協会にも何回も申し入れに。ようやく融資が認められました。
商売のやりがいは、「お客さんに喜んでもらうこと」という武井さん。約800人の顧客に招待券を手渡した「春のセール」には120人のお客さんが訪れました。震災の被害に「何とかせねば」と、お店に募金箱を置き、セールで訪れたお客さんに「震災救援募金」を訴えています。
神商連しんぶん2011年4月(第244号)より